GSやMSより儲ける「マーケットメーカー」とは何者か?

―Jane Street、Susquehanna、Citadelから見る「市場の流動性」の担い手

Wall Street JournalでJane Streetの記事を読み、Jane Street が、2026年第1四半期にGoldman SachsやMorgan Stanleyを上回る利益を計上したことに驚いた。

正直に言えば、私はこれまでJane Streetという名前を聞く機会はあっても、「何をして利益を上げている会社なのか」を十分理解していなかった。                                                        Goldman Sachsでもない。                                                                                    Morgan Stanleyでもない。                                                                                           大手ヘッジファンドでもない。                                                                                      それにもかかわらず、ウォール街でも屈指の収益力を誇る企業となっている。

さらに同社は現在、AI企業への投資やAI人材の採用を積極化するため、長年続けてきた秘密主義から少しずつ脱却し始めているという。                                                                          Jane Streetとは、いったい何者なのだろうか。                                                                 本稿では、Wall Street Journalの記事を素材に、Jane Streetを入口として、「専門マーケットメーカー(Specialized Market Maker)」という存在について整理してみたい

記事紹介 ―長年秘密主義を貫いてきたJane Streetとは

Wall Street Journalは2026年6月、“Secretive Wall Street Powerhouse Jane Street Seizes the AI Spotlight”と題した記事を掲載した。                          記事によれば、Jane Streetは2026年第1四半期にトレーディング収益161億ドル、利益103億ドルを計上した。比較として、Goldman SachsとMorgan Stanleyはいずれも約56億ドルの利益だったという。さらに、Jane Streetの従業員数は約3,500人である一方、Goldman SachsとMorgan Stanleyの従業員数は合計約12万8,000人に達することも紹介されていた。

同じ記事では、Jane Streetの収益源についても触れている。同社の利益の大半は、投資家が売買したいときに取引を成立させるマーケットメイク(市場への流動性供給)によるものだという。また同社は、500億ドル超の自己資本を使って、さまざまな投資対象の値動きにも賭けていると紹介されている。

記事では、2000年の創業から成長したJane Streetの姿も紹介されている。トレーディングフロアでは、Tシャツや短パン姿の社員が並び、数学パズルやポーカーを楽しむ独特の企業文化を持つ一方で、経営陣が積極的にメディアへ登場することは少なく、「ウォール街で最も秘密主義の企業の一つ」と評されてきたという。

AI投資を担当するトレーダーのJohn Daniel Case氏は、「私たちは文化的に閉鎖的だ。しかし、より一般向けのビジネスへ拡大している」と語っている。

記事によれば、Jane Streetは現在、年間500人超の採用を予定している。また、影響力のあるテック番組「Dwarkesh Podcast」では、Jane Streetが従業員向けの講義や研修制度を持ち、優秀な研究者やエンジニアを育てていることが紹介されていた。記事によれば、同社はAI投資や計算資源に関する契約についても発信し、AI企業に対して新たな投資先であり、事業上のパートナーにもなり得ることを伝えようとしているという。

AI分野への取り組みも紹介されている。同社は以前から機械学習をトレーディングモデルへ活用していたが、ChatGPTの登場以降、その取り組みをさらに加速させたという。

2026年4月には、AIコンピューティング企業CoreWeaveへ10億ドルを出資するとともに、60億ドル分のAIクラウド利用契約を締結した。また現在では、Anthropicへの投資を含む約200億ドル規模の未上場企業ポートフォリオを保有していることも紹介されている。

記事では、Jane Streetの競争力は、一般にイメージされるような高速取引そのものではなく、ETFなどの価格と構成銘柄や関連デリバティブとの価格差を評価し、その差を利用しながら取引とヘッジを同時に行うことにあると説明している。例えば、トルコETFが構成銘柄に比べて割高と判断されれば、アルゴリズムが自動的にETFを売り、構成銘柄を買うといった取引を行うという。

また、2008年の金融危機後に多くの金融機関がリスクを抑制する中、Jane Streetは新たな市場へ参入し、取引対象を広げながら成長を続けたことや、個人投資家の取引拡大に伴い、その売買の反対側に立つことで事業を拡大してきたことも紹介されている。

Jane Streetは何で利益を上げている会社なのか

A Jane Streetは、投資銀行でもヘッジファンドでもない

Jane Streetは、2000年に設立された米国の専門マーケットメーカーである。現在では、ETFをはじめ、株式、オプション、債券、コモディティ、暗号資産など、世界中の幅広い電子市場でマーケットメイクを行っている。

Wall Street Journalによれば、同社の利益の大半は、投資家が売買したいときに、その反対側に立って取引を成立させるマーケットメイク(市場への流動性供給)によるものだという。専門マーケットメーカーの役割や利益の仕組みについては、知識ボックス①②で整理した。

記事では、Jane Streetが2026年第1四半期にトレーディング収益161億ドル、利益103億ドルを計上したことが紹介されている。比較として、Goldman SachsとMorgan Stanleyの利益はいずれも約56億ドルであり、従業員数もJane Streetが約3,500人であるのに対し、両社合計では約12万8,000人に達するという。

専門マーケットメーカーは、狭いスプレッドを積み重ねながら継続的に流動性を供給するビジネスである。一方で、その対象となるETF市場は極めて大きい。Investment Company Institute(ICI)によれば、2024年にはETFの二次市場取引は米国株式市場全体の売買代金の約27%を占めていた。また、Jane Street自身も北米株式市場の約1割の取引に関与していると報じられている。

つまりJane Streetは、一件当たりの利ざやは小さくても、巨大な市場で膨大な取引を積み重ねることで、ウォール街でも屈指の収益力を持つ企業へ成長したと考えられる。          もっとも、WSJ記事が紹介しているように、同社はマーケットメイクに加え、500億ドル超の自己資本を用いた投資も行っており、Anthropicなど未上場企業投資の利益も一部寄与しているようだ。Jane Streetは、一般に知られている投資銀行やヘッジファンドとは異なり、マーケットメイクを中核事業としながら、自らの資本も運用する専門マーケットメーカーである。

B 専門マーケットメーカーとは何者なのか

Jane Streetを理解するうえでは、同社を一社だけの特殊な存在として見るよりも、専門マーケットメーカーという一群のプレイヤーの代表例として見る方が分かりやすい。

知識ボックス①で整理したように、専門マーケットメーカーといっても、各社の得意分野は同じではない。Jane StreetはETFやクロスアセット取引に強みを持ち、Susquehanna International Groupはオプションや定量取引で知られる。Citadel Securitiesは、米国株やオプションの電子マーケットメイク、リテール注文フローの処理で大きな存在感を持つ。

規模感も小さくない。Financial Timesは、Jane Streetが2023年に北米株式取引の10.4%に関与していたと報じている。Susquehannaも、同社ウェブサイトで世界16拠点超、従業員3,500人超の体制を説明している。Citadel Securitiesは、自社を米国株式のマーケットリーダーと説明し、米国上場オプション市場では約30%のシェアを持つ最大の取引所上マーケットメーカーだとしている。

このように見ると、Jane Streetは「たまたま収益力の高い秘密主義の会社」ではない。電子化された金融市場の中で、専門マーケットメーカーというプレイヤーがすでに大きな存在になっており、Jane Streetはその代表格の一つである。

一方で、専門マーケットメーカーは、市場の反対側に立つ仕事でもある。2026年6月、Wall Street Journalは、Susquehanna International Groupが、中国当局による証券会社への行政処分を事前に知っていた可能性のある匿名トレーダーを提訴したと報じた。記事によれば、匿名トレーダーはFutu HoldingsとUP Fintechに対する行政処分の公表前に大量のプットオプションを購入し、1億ドルを超える利益を得た可能性があるという。一方、その取引の反対側に立っていたSusquehannaは、約7,100万ドルの損失を被ったと主張している。

この事例は、専門マーケットメーカーが流動性を供給する一方で、情報を持つ相手と取引してしまうリスクも引き受けていることを示している。狭いスプレッドを積み重ねるビジネスであると同時に、常に逆選択リスクと向き合うビジネスでもある。

Jane Street、Susquehanna、Citadel Securitiesを並べて見ると、専門マーケットメーカーは、表に出にくい存在でありながら、電子市場の裏側で大きな役割を担っていることが分かる

C だからJane Streetは外へ出始めた

Jane Streetが秘密主義を少しずつ緩め始めた背景には、単なる広報方針の変化だけではなく、同社の事業そのものがAIと結びつき始めていることがあるように見える。

専門マーケットメーカーの競争力は、単に多額の資本を持つことだけではない。膨大な市場データを処理し、理論価格を計算し、複数市場でリスクを調整するモデルとシステムが重要になる。Jane Streetが以前から機械学習をトレーディングモデルに活用してきたというWSJの記事は、この点とつながっている。

その延長線上で、AIは単なる投資先ではなく、Jane Street自身の競争力にも関わるテーマになる。2026年4月にCoreWeaveへ10億ドルを出資し、同時に60億ドル規模のAIクラウド利用契約を締結したことは、AI企業への金融投資であると同時に、自社の計算資源を確保する動きとしても考えられないだろうか。

また、Anthropicを含む約200億ドル規模の未上場企業ポートフォリオも、同社がマーケットメイクで蓄積した資本を、AI時代の成長領域へ振り向けていることを示している。

しかし、AI企業へ投資し、計算資源を確保し、優秀なAI人材を採用しようとすれば、これまでのように外部から見えない会社であり続けることは難しくなるのかもしれない。実際にWSJは、Jane StreetがAI企業に対して新たな投資先であることや、事業パートナーにもなり得る存在であることを積極的に伝えようとしていると紹介している。

WSJが紹介したDwarkesh Podcastへの広告出稿や、CoreWeaveにプレスリリースを求めたエピソードは、その変化を示している。Jane Streetは、マーケットメイクで築いた資本力と技術力を背景に、AI企業やAI人材からも「選ばれる」存在になろうとしているようにも見える。

この意味で、Jane Streetが外へ出始めたのは、秘密主義を捨てたからというより、マーケットメイクで蓄積した資本と技術を生かしながら、AI時代における競争力をさらに高める必要が出てきたからではないだろうか。

 なぜ専門マーケットメーカーは巨大企業になったのか

ここからはJane Street一社の話を少し離れ、専門マーケットメーカーという業態全体が存在感を高めてきた市場構造を整理したい。

A 専門マーケットメーカーが強くなった市場構造

専門マーケットメーカーが近年存在感を高めた背景には、複数の市場構造の変化があったと考えられている

第一に、取引所取引の電子化と標準化である。                      ETF、オプション、指数先物、流動性の高い現物株などでは、価格が電子市場でリアルタイムに更新される。こうした領域では、個別企業との関係や営業力よりも、理論価格を計算するモデル、複数市場を利用したヘッジ、低遅延システム、在庫管理などが競争力になりやすい。       ただし、これは株式市場全体を専門マーケットメーカーが支配しているという意味ではない。大口ブロックトレードや顧客関係を伴う取引では、投資銀行・証券会社の役割はなお大きい。この点は後述する。

第二に、売買スプレッドの縮小である。                          米国株式市場では2001年に**Decimalization(株価表示の小数化)**が導入され、株価の表示単位が分数から1セント単位へ移行した。これにより、従来の広いスプレッドから収益を得る余地は小さくなった。                                    スプレッドが狭くなると、一件当たりの利ざやは小さくなる。その一方で、膨大な取引を低コストで処理し、理論価格・ヘッジ・在庫を高速に管理できる参加者にとっては、取引量を積み重ねる余地が生まれる。

第三に、市場間競争と注文ルーティングの高度化である。                 2005年に採択された**Reg NMS(Regulation National Market System)**は、米国株式市場において複数の取引所・電子市場を横断した最良執行を促す制度である。市場が分散し、注文が複数の取引所や電子市場へ流れるようになると、複数市場の価格を同時に見ながら、どこに気配を出し、どこでヘッジするかを判断する能力が重要になる。

第四に、ETF市場の拡大である。                            ETFは一つの銘柄として売買されるが、その価格は原資産、先物、為替、金利、設定・交換コストなど複数市場と結び付いている。Investment Company Institute(ICI)によれば、2024年にはETFの二次市場取引は**米国株式市場全体の売買代金の約27%**を占めた。       このような市場では、個別銘柄を分析する力だけではなく、複数市場を横断して理論価格を算出し、リスクを調整する能力が求められる。これは、システム開発や定量モデルに継続的に投資する専門マーケットメーカーにとって、強みを発揮しやすい領域だったといえる。

第五に、米国債市場の電子化である。                           かつて米国債市場は銀行・証券会社のディーラーが中心だった。しかし、特にオン・ザ・ラン米国債のように流動性が高く標準化された商品では、電子取引の比率が高まり、**Principal Trading Firms(PTF)**と呼ばれる自己勘定の電子取引業者も大きな役割を持つようになった。   PTFは、顧客向け営業や引受を行う銀行・証券会社とは異なり、自己資本とシステムを使って電子市場で売買を行う主体である。米国債市場におけるPTFの台頭は、専門マーケットメーカー的なプレイヤーの役割が株式・ETFだけでなく、債券市場にも広がっていることを示している。

このように見ると、専門マーケットメーカーの成長は、一社の特殊な成功というより、電子化・標準化・市場分散・ETF拡大・債券電子化が重なった結果として理解しやすい

B 投資銀行・証券会社との棲み分け?

専門マーケットメーカーの存在感が高まったからといって、投資銀行・証券会社の役割が小さくなったとは言い切れないように思われる。                          むしろ、市場の電子化や標準化が進む中で、それぞれが強みを発揮する領域が明確になってきたと考える方が自然ではないだろうか。

専門マーケットメーカーが特に強みを発揮しやすいのは、ETFやオプション、指数先物、流動性の高い現物株、オン・ザ・ラン米国債など、電子化・標準化が進み、理論価格の算出や高速なヘッジが競争力となる市場である。                               一方、投資銀行・証券会社は、IPOや社債発行などの引受業務、M&Aアドバイザリー、大口ブロックトレード、プライムブローカレッジ、企業や機関投資家との長期的な取引関係など、資本力や顧客基盤、信用供与が競争力となる分野で引き続き重要な役割を担っている

その背景には、資本の使い方の違いもあるように思われる。                 投資銀行・証券会社は、引受や融資、デリバティブ、証券金融など、多様な業務へ資本を配分する。一方、専門マーケットメーカーは、自己資本を用いながらも、理論価格の算出、在庫管理、ヘッジ、システム開発などへ経営資源を集中させることで、電子市場に特化した競争力を築いてきた。

もちろん、Jane StreetやSusquehanna、Citadel Securitiesが現在の地位を築いた理由を、こうした市場構造だけで説明することはできない。しかし、金融市場が電子化・標準化されるにつれて、専門マーケットメーカーという新しいプレイヤーが力を発揮しやすい領域が広がってきたことは、今回のWSJ記事を理解する上で重要な視点ではないだろうか。

若手金融マンへの示唆――金融市場の「主役」は多様化?

今回のWall Street Journalの記事を読むまで、私自身、Jane Streetという名前は知っていても、そのビジネスモデルを十分理解していたわけではなかった。

金融市場では、IPOやM&A、大型資金調達などはニュースになりやすい。一方で、その売買を日々支えるマーケットメーカーは、一般投資家はもちろん、金融業界で働いていても意識する機会はそれほど多くないのではないだろうか。                           しかし、電子化やETF市場の拡大などを背景に、専門マーケットメーカーは金融市場の重要なインフラとして存在感を高めてきた。Jane StreetがGoldman SachsやMorgan Stanleyを上回る利益を計上したという事実も、その変化を象徴する出来事の一つとして見ることができる。

もちろん、専門マーケットメーカーが投資銀行・証券会社に取って代わるわけではない。    市場が変化する中で、それぞれが強みを発揮する領域が分かれ、金融市場を支えるプレイヤーも多様化しているように見える。                                   今回の記事は、一つの企業の成功物語というよりも、金融市場では「誰が価格をつくり、誰が流動性を支えているのか」という視点で市場を見るきっかけを与えてくれたように感じた

知識ボックス

① 専門マーケットメーカー(Specialized Market Maker)とは

専門マーケットメーカー(Specialized Market Maker)とは、上場・電子化・標準化された金融商品について、自己資本と高度なシステムを用い、継続的に買値・売値(Bid/Ask)を提示し、市場へ流動性を供給する専門業者である。実際には、各社の業務範囲は一様ではなく、マーケットメイクに加えて、自己資本によるリスクテイク、裁定取引、関連する投資活動を行う場合もある。

一般に「マーケットメーカー」と聞くと証券会社の自己売買部門を思い浮かべるかもしれない。しかし近年は、ETFやオプションなど電子化された市場を中心に、マーケットメイクそのものを専門事業とする企業群が世界的に存在感を高めている。

代表的な企業は次のとおりである。

企業 主な強み・特徴 主な市場
Jane Street ETF、クロスアセット裁定、グローバル市場 ETF、株式、債券、オプション等
Susquehanna International Group オプション、定量取引、ETF オプション、ETF、株式
Citadel Securities 電子マーケットメイク、リテール注文フロー 米国株、ETF、オプション
Virtu Financial 電子マーケットメイク、グローバル市場 株式、ETF、FX等

一方、投資銀行・証券会社との違いは次のように整理できる。

専門マーケットメーカー 銀行・証券会社
電子市場で継続的に流動性を供給 IPO・社債引受、M&A、顧客営業など総合金融サービス
自己資本を用いたマーケットメイク 顧客取引・引受・融資・PBなど幅広い業務
ETF・オプション・先物・電子市場に強み 発行体・顧客との関係構築や大口取引に強み

なお、一部の企業はETFのAuthorized Participant(AP)も兼ねるが、AP(一次市場でETFの設定・交換を行う主体)と、マーケットメーカー(二次市場で継続的に価格を提示する主体)は本来異なる役割である。

② 専門マーケットメーカーはどのように利益を上げるのか

専門マーケットメーカーは、株価や金利の方向性を予想して利益を狙うことを主な目的としているわけではない。                                     基本となる役割は、投資家が「買いたい」「売りたい」と思ったときに、その反対側に立って継続的に売買を成立させることである。

しかし、そのためには常に価格を提示するだけでは足りない。もし提示した価格が市場実勢からずれていれば、マーケットメーカーは一方的に不利な価格で取引させられてしまう。       そこで専門マーケットメーカーは、複数市場から理論価格を算出し、その価格を基準に買値(Bid)と売値(Offer)を提示している。

ETFを例にすると、その理論価格はETF市場だけでは決まらない。専門マーケットメーカーは、次のような情報を同時に利用して価格を計算している。

理論価格の算出に利用される情報
ETF市場 ETFの板情報・売買価格
原資産 構成銘柄、債券など
関連市場 株価指数先物、金利先物など
為替市場 USD/JPYなど
コスト要因 設定・交換コスト、貸株料、空売りコストなど
市場環境 海外市場との取引時間差、流動性など

つまり、ETFは一つの銘柄のように見えても、専門マーケットメーカーにとっては、複数市場を束ねた金融商品である。                                  投資家との取引が成立すると、その時点で最も流動性が高く効率的な市場を利用してリスクを調整する。その結果、マーケットメーカーは価格差やスプレッドを積み重ねながら、市場へ継続的な流動性を供給している。

重要なのは、競争力が単純な売買スピードだけで決まるわけではない点である。理論価格を計算するモデル、複数市場を利用したヘッジ、在庫管理、取引コストの最適化などを組み合わせることで、狭いスプレッドでも利益を積み上げている。

個々の取引で得られる利ざやは小さい。しかし、その対象となる市場は極めて大きい。Investment Company Institute, 2025 Investment Company Fact Bookによれば、2024年にはETFの二次市場取引は**米国株式市場全体の売買代金の約27%**を占めた。        また、Jane Street自身も北米株式市場の約1割の取引に関与していると報じられている。   狭いスプレッドであっても、こうした巨大な取引量を相手に膨大な回数の取引を積み重ねることで、大きな収益につながると考えられる。

このような市場では、競争力の源泉は、個別企業の分析や営業力ではなく、理論価格をリアルタイムで計算するモデル、複数市場を利用したヘッジ、在庫管理、低遅延システムなどになる。そのため、こうした分野では、総合的な金融サービスを提供する投資銀行・証券会社よりも、システム開発や定量モデルへ継続的に投資する専門マーケットメーカーが競争優位を持ちやすいと考えられている。

(編集部より)                                        あわせて読むと理解が深まる記事

参照記事

2026年6月19日 The Wall Street Journal

“Secretive Wall Street Powerhouse Jane Street Seizes the AI Spotlight”

wsj.com

 

2026年6月30日 The Wall Street Journal

“Insiders Made $100 Million on China Brokerage Crackdown, Trading Firm Alleges”

wsj.com

※本稿は、米国の金融コラム・業界記事を素材に、背景となる考え方や論点を整理することを目的とした考察です。本文中で紹介している参照記事には、有料媒体のものも含まれています。   本稿は生成AIを活用して下書き・構成整理を行い、筆者が検証・加筆修正の上で公開しています。