レバレッジ型ETFは、韓国での急落後もなぜ米国で使われ続けているのか?

―「危険」とみなされる商品が市場に残る理由を考える

2026年夏、韓国でレバレッジ型ETF(LETF)をめぐる大きな損失が報じられた。

個別株の値動きを日次で2倍にする商品へ資金が流れ込んだ後、原資産の株価が下落した。      The Wall Street Journal(WSJ)は、韓国関連の大手レバレッジETF10本で、投資家が不利なタイミングで売買したことによる損失を約210億ドルと紹介した。別の研究では、日次リバランスが原資産の終値形成へ影響し、その価格変動をさらに増幅した可能性も示された。

しかも、こうした大きな損失を生み得ること自体は、2026年夏になって初めて判明したわけではない。運用会社や規制当局は、長期の2倍・3倍ではなく、日次の値動きの倍率を目標とする商品であることを繰り返し説明してきた。上下動が続けば、日次リターンの複利によって、一定期間の成績は原資産の上昇率や下落率を単純に2倍・3倍したものから離れていく。

その一方で、米国のレバレッジ型ETF市場は、韓国での急落より前から拡大していた。2025年から2026年前半にかけて、レバレッジ型ETFの資産残高、売買、新規設定は急拡大した。2026年夏には小規模商品の閉鎖が相次ぎ、市場の淘汰も始まったが、TQQQ(Nasdaq-100の日次3倍を目指すETF)、SOXL(半導体株指数の日次3倍を目指すETF)、NVDL(NVIDIA株の日次2倍を目指すETF)などには、なお数十億ドルから数百億ドル規模の資産と大きな売買が残っている。

韓国で表面化した損失と市場への影響を見れば、レバレッジ型ETFが「危険な商品」とみなされるのは理解できる。それでも、米国では主要商品に大きな資産と売買が残っている。これほどリスクが知られているのに、なぜ米国ではレバレッジ型ETFの需要が残っているのだろうか。

記事紹介――大きな利益と損失、拡大するレバレッジはどう報じられたのか

2026年9月4日、The Wall Street Journal(WSJ)は“You’re Not Tough Enough to Earn These Huge Returns”と題する記事を掲載した。記事は、レバレッジ型ETFによって短期間に大きな利益を得た投資家と、その後の急落で大きな損失を被った投資家の双方を紹介している。

記事によれば、2026年8月下旬時点で、米国には772本のレバレッジ型ETFがあり、そのうち612本は指数ではなく、個別株、暗号資産、コモディティなど単一の資産を対象としていた。 S&P 500が1%強上昇したある日には、20本を超えるレバレッジ型ETFが20%以上上昇したという。

記事は韓国の半導体株などに連動するレバレッジ型ETFへ資金を投じた個人投資家の損失も取り上げた。Chris MurrayとMarco Sammonの研究による推計では、韓国関連の大手レバレッジETF10本で、投資家の売買タイミングによる損失は約210億ドルに達したとWSJは紹介している。

WSJは、レバレッジ型ETFの商品対象が、指数だけでなく、個別株、暗号資産、コモディティなどへ広がっていることも紹介している。

その約2カ月前の6月28日、WSJは“The Trillion-Dollar Borrowing Binge
Lifting the Stock Market to Risky Heights”で、米国株市場に広がるレバレッジを取り上げた。

記事は、個人投資家による信用取引、オプション、レバレッジ型ETF、企業や金融機関を通じた借入れなど、複数の経路から株式市場へレバレッジが入っていると報じた。レバレッジ型ETFの資産残高は、2026年3月下旬から6月初めまでに約2倍の2,200億ドルへ増加したという。

同記事は、レバレッジ型ETFの日次リバランスが原資産市場へ与える影響も取り上げた。レバレッジ型ETFは日々の目標倍率を維持するため、原資産の上昇後には買い増し、下落後には売却する方向でエクスポージャーを調整する。記事は、こうした機械的な売買が大きくなれば、原資産の値動きにも影響し得ると指摘している。

8月25日、BloombergのMatt LevineはMoney Stuffの“Who Should Control Anthropic?” のLETF arbitrage部分で、レバレッジ型ETFの日次リバランス注文が市場参加者から予測可能になる点を取り上げた。

Levineは、ETFが終値近辺で行うことになる売買を市場参加者が事前に予測する取引について、ETFへ流動性を供給する取引、日中のモメンタム取引、LETFを「狙った」取引という複数の見方を紹介している。あわせて、韓国の個別株レバレッジ型ETFを分析したPrinceton UniversityのYinhong Zhaoの研究を取り上げた。

韓国のLETFで表面化したリスク

A.韓国では、なぜLETFがヘッドラインニュースになったのか

韓国では2026年5月27日、Samsung ElectronicsとSK Hynixを対象に、株価の日次上昇率の2倍を目指すロング型のレバレッジETFと、下落方向の値動きを目指すインバースETFを合わせた16本の個別株ETFが一斉に上場した。

Princeton UniversityのYinhong Zhaoによるワーキングペーパー“Preying on Leveraged ETFs”によれば、これらの初期資産残高は合計4.3兆ウォンだったが、3週間で約14兆ウォンまで増加した。

その後、対象となった半導体株が下落すると、特に上昇方向へレバレッジを取る商品で大きな損失が表面化した。ただし、韓国事例が注目された理由は、個人投資家が値動きの大きい商品で損失を被ったことだけではない。

2026年9月時点で査読前のワーキングペーパーではあるものの、Zhaoの推計では、世界各地に上場するSK Hynix関連商品のリバランス必要額は、韓国での商品上場後、平均で同株の日次売買代金の19.8%、ピーク時には52.5%に達した。

商品が急拡大した結果、投資家の損失だけでなく、LETFが行う日次リバランスそのものが、原資産の価格形成へ影響する可能性まで問題になったのである。

韓国での商品導入から資金流入、相場下落、規制強化までの経緯は、知識ボックス①「韓国では何が起きたのか――個別株上昇からLETF導入、規制強化まで」で整理している。

B.リスクは値動きの大きさだけなのか

レバレッジ型ETFは、一日ごとに目標倍率へエクスポージャーを戻す。

例えば日次2倍のロング型では、原資産が上昇すれば、その日の終わりに2倍のエクスポージャーを維持するため買い増しが必要になる。原資産が下落すれば、反対にエクスポージャーを減らす必要がある。

このため、商品規模と当日の値動きが分かれば、市場参加者は、引け付近でLETFからどちら向きのリバランス需要がどの程度生じるかをある程度予測できる。日次倍率と複利の仕組みは、知識ボックス③「なぜ『日次3倍』は『長期3倍』ではないのか」で整理している。

韓国では、この予測可能性が特に重要になる市場構造があった。

Samsung ElectronicsやSK Hynixの終値は、取引終了前の10分間に注文を集め、最後に一つの価格でまとめて成立させる終値コール・オークションで決まる。韓国上場の商品に加え、香港上場の関連LETFの一部も同じソウル市場の終値を基準に日次エクスポージャーを調整するため、大きなリバランス需要がこの短い時間帯へ集中した。

つまり、商品残高とその日の株価変動から、短い時間帯に大きな買い注文や売り注文が出ることを事前に推測しやすい状況が生まれていた。

BloombergのMatt LevineはMoney Stuffで、こうした予測可能な注文を利用する取引に、少なくとも三つの見方があると整理している。

一つは、流動性供給である。LETFが終値近辺で大量に買うと予測できれば、トレーダーが事前に株式を買い、LETFの需要へ売ることができる。予測可能な買い手に在庫を供給しているともいえる。

二つ目は、モメンタム取引である。株価上昇からLETFの追加買いを予測し、その前に同じ方向へポジションを取る。

そして三つ目が、Levineが「フロントランニング(先回り取引)」、あるいはLETFを「狙った」取引と表現した見方である。ここでいうフロントランニングは、顧客の非公開注文情報を利用する通常の意味とは異なる。公開情報から予測できるLETFの機械的な注文を先回りするという意味で使われている。

Zhaoは特定のトレーダーの身元や意図を直接観測したわけではないが、モデルでは、先回りする市場参加者自身の取引によって終値がさらに動けば、その終値を基準に計算されるLETFのリバランス需要も大きくなり、その注文へ反対売買する余地が広がる可能性を分析している。

同じ取引は、LETFへ流動性を提供する取引にも、予測可能な注文を先回りする取引にも、さらにLETFの注文量そのものを増幅させる取引にもなり得る。

韓国では、予測可能な大口注文が短い終値オークションへ集中していたため、こうした先回り取引が意味を持ちやすい条件が揃っていた可能性がある。

C.韓国と米国のLETFは、同じ条件で取引されているのか

韓国と米国のレバレッジ型ETFには、一日ごとに目標倍率へエクスポージャーを戻すという共通の仕組みがある。したがって、日次リバランスが予測可能な注文を生むという点は、韓国だけの特徴ではない。

ただし、韓国では、その影響を大きくしやすい条件が重なっていた。

対象がSamsung ElectronicsとSK Hynixという少数の銘柄へ集中し、国内商品が一斉に上場した。さらに香港上場の関連商品の一部も同じソウル市場の終値を参照し、大きなリバランス需要が10分間の終値オークションへ集中した。

予測可能な大量注文が、短い時間帯に、一つの参照価格へ集中する。この組み合わせが、LETFの注文を先回りする取引を有効にしやすい環境を作った可能性がある。

一方、Zhaoの推計では、米国の主要な指数型LETF群では、リバランス注文の規模が、それを吸収する参照市場の流動性や終値形成能力に対して韓国事例ほど大きくない。そのため、同じ日次リバランスの仕組みがあっても、推計される価格インパクトは韓国事例より小さい。

Zhaoは、韓国事例で必要となるリバランス注文の終値オークションに対する規模を、米国で最も極端な個別株LETF群の約3倍、米国の指数LETF群の約10倍と推計している。

もちろん、米国の個別株型LETFで同様の問題が起こらないという意味ではない。個別株型ではエクスポージャーが一社へ集中するため、商品規模が原資産の流動性に対して大きくなれば、韓国と同じメカニズムが強く働く可能性は残る。

日次リバランスという商品構造は共通していても、その市場への影響は、商品残高が参照市場の流動性に対してどれほど大きいか、そして終値がどのように形成されるかによって大きく変わる。

韓国事例は、LETFが原資産市場へ影響し得る仕組みを示している。ただし、そこで観察・推計された影響の大きさを、そのまま米国市場、特に分散指数型LETFへ当てはめることはできない。

韓国と米国でこうした条件がどう異なるのかは、知識ボックス②「韓国と米国のLETF市場は何が違うのか」で整理している。

米国のLETFは、どのような商品価値を提供しているのか?

A.「日次3倍」は「長期3倍」ではない

ProSharesのTQQQは、Nasdaq-100指数の日次リターンの3倍を目標とする。DirexionのSOXLも、半導体株指数の日次リターンの3倍を目標とする。NVDLは、NVIDIA株の日次リターンの2倍を目標とする商品である。

ここで重要なのは、「日次3倍」と「一定期間のリターンの3倍」は、同じものではないことである。

例えば、原資産が100から110へ10%上昇し、翌日に10%下落して99になったとする。2日間の原資産リターンはマイナス1%である。この2日間のリターンを単純に3倍する商品なら、マイナス3%、100から97になる計算である。

しかし、日次3倍のLETFでは、初日の10%上昇によって100から130となり、翌日はその130から30%下落するため91になる。2日間のリターンはマイナス9%である。

LETFは、保有期間全体のリターンを最後に2倍・3倍する商品ではない。毎日のリターンを2倍・3倍し、その結果を新しい元本として日々つないでいく商品である。

逆に、原資産が同じ方向へ上昇し続ければ、複利が有利に働き、一定期間のリターンが原資産のリターンを単純に3倍した数字を上回ることもある。そのため、「日次リセットだから長く持てば必ず減価する」という説明も正確ではない。実際の成績は、原資産の方向性、変動率、資金調達費用、運用経費、保有期間などによって変わる。

運用会社の説明にも違いがある。Direxionは、翌日や数日間の見通しを表現し、頻繁にポジションを監視できる投資家を主な利用者として想定している。一方、ProSharesは、複数日保有した場合には日次目標から成績が離れ得ることを説明しつつ、1日を超える保有自体を否定しているわけではない。

供給側が共通して目標としているのは、長期の倍率ではなく、一日ごとに設定された倍率である。

日次倍率と一定期間の倍率の違いは、知識ボックス③「なぜ『日次3倍』は『長期3倍』ではないのか」で整理している。

B.LETFでは、投資家はどのようなコストを負担するのか

LETFを利用しても、レバレッジに伴うコストがなくなるわけではない。

信用取引では、投資家自身が証券会社から資金を借り、その対価として信用金利を支払う。LETFでは、投資家本人に信用金利が請求されるわけではないが、ファンドがスワップや先物などを通じてレバレッジを調達し、その資金調達費用に加えて運用経費や取引費用などが商品のリターンへ反映される。

LETFは、レバレッジのコストをなくした商品ではない。個人投資家が自分で資金を借りて負担する形から、ファンドが内部でレバレッジを調達し、そのコストを商品を通じて負担する形へ変えている。

したがって、信用取引とLETFのどちらが低コストになるかは一概には決まらない。信用金利は証券会社や借入額によって異なり、LETF側の資金調達条件や運用経費も商品によって異なる。保有期間によっても比較は変わる。

LETFの中でも、その差は大きい。

MurrayとSammonの研究は、LETFがレバレッジを調達する際の資金調達スプレッドについて、広範な株価指数型では1%未満と推計する一方、個別株型では年率6.8~9.8%と推計している。こうした資金調達コストは、明示的な手数料として投資家へ請求されるわけではないが、ETFのリターンを通じて最終的に投資家が負担する。

原資産そのもののリスクも異なる。TQQQのような分散指数型では、一社固有のリスクは複数銘柄へ分散される。一方、NVDLのような個別株型では、一社の決算、不祥事、規制などによる急落をレバレッジによって増幅して受ける。

MurrayとSammonによれば、個別株型LETFの対象企業は、設定前から市場でも特に変動率が高く、直近リターンも高い銘柄に偏っていた。

さらに、Aで見た日次リセットによる経路依存も残る。LETFでは、投資家自身がレバレッジを日々調整しなくてもよい一方、その日次調整によって、一定期間のリターンが原資産の単純な2倍・3倍から乖離する可能性を引き受ける。

つまり、LETFではレバレッジの管理を商品内部へ移せる一方、資金調達費用、運用経費、日次リセットによる経路依存、原資産固有のリスクといった対価を負担する。しかも、その大きさは商品によって異なる。

信用取引、オプション、先物との具体的な違いは、知識ボックス④「LETF・信用取引・オプション・先物は何が違うのか」で整理している。

C.それでも、レバレッジをETFとして提供する意味は何か

それでは、こうしたコストやリスクを負担してまで、レバレッジをETFとして利用することには、どのような意味があるのだろうか。

一つは、日次レバレッジへのアクセス方法が変わることである。

LETFなら、投資家は一つのETFを購入することで、日次2倍・3倍のエクスポージャーを取ることができる。通常のRegulation Tによる信用取引では、一般的な株式や非レバレッジETFを新規購入する際、原則として購入額の50%の自己資金が必要になる。つまり、自己資金1に対して取れるエクスポージャーは通常おおむね2倍である。これに対し、日次3倍型LETFを現金で購入すれば、投資家自身が借入れを行わずに、購入代金に対して日次3倍のエクスポージャーを取ることができる。

この意味で、LETFの商品価値は単なる売買操作の簡便さだけではない。同じ自己資金からより大きな日次エクスポージャーを取れるという資本効率にもある。

二つ目は、レバレッジを維持するための管理を、投資家自身が直接行わなくてもよいことである。

現金でLETFを購入する場合、投資家自身が証券会社から資金を借りるわけではない。そのため、通常の追証や強制売却に備えて借入額と証拠金を管理する必要はなく、損失は原則として購入代金までとなる。

先物やオプションを直接利用する場合に必要となる、証拠金、満期、ロール、権利行使価格などの管理も、LETFでは投資家自身が行う必要はない。その裏側では、ファンドとその取引相手がデリバティブを使い、一日ごとに目標倍率へエクスポージャーを調整している。

さらにインバースETFなら、個人投資家は株式を借りて空売りする代わりに、ETFを「買う」という通常の売買行為で下落方向のエクスポージャーを取ることができる。

したがって、LETFの商品価値を単に「簡単に買える」と表現するだけでは十分ではない。

LETFの商品価値は、レバレッジそのものだけにあるのではない。日次レバレッジの取得と管理を一つのETFにパッケージ化することで、投資家自身が借入れや証拠金を管理せず、自己資金に対してより大きな日次エクスポージャーを取り、インバース型では空売りをせずに下落方向のポジションまで取れるようにしたことにある。

もちろん、その利便性と資本効率には、Bで見たコストとリスクが伴う。それでも、「自分でレバレッジを組成し管理する」のではなく、「レバレッジが組み込まれた商品を買う」という選択肢を作ったこと自体に、LETFが提供する商品価値があると考えられる。

米国でLETFの商品価値を見出しているのは、どのような投資家か?

では、米国でこうしたLETFの商品価値を実際に見出しているのは、どのような投資家なのだろうか。

A.売買の中心は「自己判断で頻繁に取引する個人」である

米国でLETFを利用している投資家について、年齢、資産額、経験年数などを網羅した公的な統計はない。誰がどの程度の商品を保有しているかを、市場全体で確認することも難しい。

一方、誰が売買しているかについては推計がある。

DirexionがCompound Insights、Vanda Researchなどのデータを基に作成した2026年の白書によれば、2025年4月から7月の米国株売買全体では、自己判断型の個人投資家が占める割合は約5.5%だった。これに対し、レバレッジ/インバース商品の売買代金では、約90%を自己判断で頻繁に売買する個人投資家が占めたと推計されている。

もちろん、この90%は資産残高や保有者数ではなく、売買代金についての推計である。また、この層が経験豊富で洗練された投資家だけで構成されていることや、時代を通じて同じ投資家層が取引してきたことを意味しない。

それでも、米国のLETF市場を主として年金基金や保険会社が長期保有する市場と見るのは難しい。機関投資家であれば、指数先物やスワップなど、より低コストで精密にエクスポージャーを調整できる手段へアクセスできる場合も多い。

少なくとも売買の中心にいるのは、通常の証券口座から、自らの判断でポジションを頻繁に変更する個人投資家である。

B.実際の利用行動は、LETFの商品性と整合するのか

実際の利用期間も、長期保有型のETFとはかなり異なる。

過去の学術研究でも、LETFの平均保有期間は1カ月未満と推計されている。Direxionは翌日や数日間の市場見通しを取引する用途を説明し、Charles Schwabも個別株型LETFを短期戦略を用いるアクティブなトレーダー向けの商品として説明している。

2020年、2022年、2025年の相場局面を見ると、ロング型とインバース型の間で資金が移動し、下落後の反発を狙う取引と、下落そのものを狙う取引の双方が見られた。

ここまでが、過去の保有期間研究、現在の運用会社・証券会社の説明、最近の資金フローから確認できる利用行動である。これらの事実関係を、前章で見たLETFの商品性と重ねてみたい。

ロング型とインバース型の間で資金が移動している以上、LETFの利用者を、単純に「株価は上がり続けると考える投資家」と捉えることは難しい。

少なくとも、平均保有期間や資金フローから見える利用行動は、「長期保有する高倍率の株式ファンド」よりも、短期的な方向性を大きく表現するための取引手段という商品像に近い。

短期的な方向性を大きく取りたい個人投資家にとって、LETFなら、一つのETFを購入することで日次2倍・3倍やインバースのエクスポージャーを取ることができる。前章で見たように、3倍型なら通常の信用取引を上回る日次エクスポージャーを現金で取得でき、投資家自身が借入額や追証を管理する必要もない。

一方、信用取引に慣れ、低い金利で資金を借りられる投資家や、大口の機関投資家にとっては、信用取引、先物、スワップの方が効率的な場合もある。

それでも、自己判断で頻繁に売買する個人が取引の中心にあり、実際の保有期間も比較的短いという利用行動は、日次レバレッジを一つのETFで利用できるというLETFの商品性とは整合しているように見える。

C.「危険」と知られていても、なぜ需要が残るのか

LETFへの需要の一部は、投資家がリスクを十分に理解していないことでも説明できる。

日次3倍を長期3倍と誤解する投資家や、短期間の大幅上昇だけを見て参入する投資家は存在するだろう。実際、韓国の事例は、商品への資金流入が極端になれば、大きな損失だけでなく原資産市場への影響まで生じ得ることを示した。

しかし、それだけでは米国でLETFが長く使われている理由を十分に説明できない。

少なくとも確認できる事実では、売買の中心には自己判断で頻繁に取引する個人がいる。過去の研究では保有期間は比較的短く、発行会社や証券会社も短期的な方向性取引を利用例として示している。

そしてLETFは、その投資家に対して、通常のETFを売買する形で日次2倍・3倍やインバースのエクスポージャーを提供する。信用取引と比べても、自己資金から取れるエクスポージャー、追証を含む資金管理、レバレッジの調達方法は異なる。

米国でLETFの取引を担う個人の中には、信用取引やデリバティブを直接利用するよりも、利便性、資本効率、資金管理、場合によってはコストまで含めて、LETFの方が使いやすいと判断する投資家が相当数いるのではないか。

普通のETFと比べれば、LETFは高コストで値動きが大きく、長期保有には扱いにくい商品に見える。一方、短期間だけレバレッジを取りたい投資家にとっての比較対象を、信用取引、オプション、先物へ変えると、評価は変わり得る。

米国でLETFの需要が残っている理由の一つは、そのリスクと引き換えに提供される商品価値が、少なくとも売買の中心にいる、短期的にレバレッジを利用したい個人投資家のニーズに合っていることではないか。

これは、すべてのLETF利用者が合理的に商品を選んでいるという意味ではない。「危険なETFをなぜ買うのか」ではなく、「短期的なレバレッジを取る他の方法と比べ、なぜLETFを選ぶのか」と問い直すと、米国でこの商品が使われ続けていることについて、別の見方ができる。

若手金融マンへの示唆――「危険」の先にある存在理由を見る

金融商品について大きな損失が報じられると、「危険な商品だった」という評価が先に立ちやすい。

韓国のLETFで起きた損失や市場への影響を見れば、その評価には十分な理由がある。一方、米国では、同じ日次レバレッジという仕組みを持つ商品が長く使われ続け、現在も大きな売買を集めている。

今回の記事に興味を持った理由は、「危険」とみなされる商品でも、市場で長く使われ続けているなら、そこには利用者にとって何らかの存在理由があるのではないかと思ったからだ。

LETFの場合、その理由をたどると、単に大きなリターンを狙えることだけではなかった。日次レバレッジをETFとして利用できるようにすることで、資本効率や資金管理、インバースを含む方向性取引へのアクセスの仕方まで変えていた。そして、その商品性は、米国で実際に取引の中心となっている個人投資家の行動とも整合しているように見えた。

商品が市場に残る理由を考えることは、その商品を正当化することとは違う。誰が、何を便利だと感じて使っているのかをたどると、その利便性と引き換えに生じるコストやリスクも見えやすくなる。

LETFを巡るニュースを追ってみると、「危険か安全か」という評価だけでは見えにくかった、商品と市場参加者の関係が少し違って見えた。

 知識ボックス

 ① 韓国では何が起きたのか――個別株上昇からLETF導入、規制強化まで

導入前

2026年春、Samsung ElectronicsやSK
Hynixなど韓国の半導体株はすでに大きく上昇し、メモリー半導体株への強い上昇期待が形成されていた。

5月27日

Samsung ElectronicsとSK Hynixを対象に、日次2倍のロング型とインバース型を合わせた16本の個別株ETFが一斉上場した。

個人投資家には当初から一定の参入条件があり、事前教育2時間と1,000万ウォンの基本預託額が求められていた。ただし、預託額には一定割合の有価証券を充当でき、取引経験などに応じて証券会社が基準を引き下げる余地もあった。

上場後3週間

関連商品の資産残高は4.3兆ウォンから約14兆ウォンへ急増した。Zhao論文によれば、保有者の約92%は個人投資家だった。

その後

半導体株が下落すると、特に上昇方向へレバレッジを取る商品で損失が拡大した。同時に、商品残高が原資産市場に対して巨大になったことで、日次リバランスが終値形成へ影響する可能性も問題になった。

7月16日

韓国金融当局は、新たな個別株LETFの上場を一時停止し、広告・マーケティングを制限するなどの対策を発表した。

7月末~8月

個人投資家の最低預託額は1,000万ウォンから3,000万ウォンへ引き上げられ、現金のみとなった。証券会社による基準引下げもできなくなり、事前教育や模擬取引も強化された。

個別株の上昇 → LETFの一斉導入 → わずか数週間での資金急増 → 相場下落と損失 → 市場構造への懸念 → 規制強化、という一連の動きが数カ月で起きた。

 ② 韓国と米国のLETF市場は何が違うのか

韓国と米国のLETFには、一日ごとに目標倍率へ戻すという共通の仕組みがある。しかし、その日次リバランスが原資産価格へ与える影響は、市場構造によって異なる。

項目 2026年の韓国事例 米国市場
対象資産 Samsung ElectronicsとSK Hynixへ集中 分散指数、セクター、個別株など多数
商品設定 国内16本が同日に上場 多数の運用会社が異なる時期に設定
投資家 対象商品の約92%を個人が保有 売買代金では自己判断で頻繁に売買する個人が中心との推計。市場全体の保有比率は不明
リバランス規模 SK Hynixで必要額が日次売買代金の平均19.8%、ピーク52.5%との推計 商品・原資産により大きく異なる
終値形成 10分間の終値コール・オークションへ注文が集中 市場・商品によって異なる

韓国では、Samsung ElectronicsやSK Hynixの終値が、取引終了前の10分間に注文を集めて一つの価格を決める終値コール・オークションで形成される。韓国上場の商品に加え、香港上場の関連LETFの一部も同じ終値を参照した。

重要なのは、最終的に参照価格へ向かう機械的なフローが、その価格形成市場の流動性に対してどれほど大きいかである。

 ③ なぜ「日次3倍」は「長期3倍」ではないのか

ここでいう「長期3倍」とは、保有期間全体の累積リターンを3倍するという意味で考える。

原資産が100から始まり、初日に10%上昇して110、翌日に10%下落して99になったとする。2日間の累積リターンはマイナス1%である。

仮に、2日間全体のリターンを3倍する商品なら、マイナス3%なので100は97になる。

しかし、日次3倍LETFでは計算が異なる。初日は10%の3倍で30%上昇し、100から130になる。翌日は、その130に対して30%下落するため91になる。

   原資産    仮に「2日間3倍」なら   日次3倍LETF
開始    100    100   100
1日目:+10%    110    ―   130
2日目:-10%      99    ―   91
2日間の累積リターン   -1%    -3% → 97   -9% → 91

日次3倍LETFは、保有期間全体のリターンを最後に3倍する商品ではない。毎日のリターンを3倍し、その日の結果を翌日の新しい元本として計算する商品である。

反対に、原資産が2日連続で10%上昇した場合、原資産は100から121となり、2日間の累積リターンは21%である。その3倍なら63%、100から163となる。

一方、日次3倍LETFは100→130→169となり、69%上昇する。

したがって、日次リセットは常に不利に働くわけではない。方向が継続する相場では複利が有利に働く場合もあり、上下動が大きい相場では不利になりやすい。

 ④ LETF・信用取引・オプション・先物は何が違うのか

以下では、LETFは現金で購入する場合を比較する。

項目 現金でLETF購入 信用取引 ロング・オプション 先物
レバレッジの作り方 ファンド内部で調達 投資家自身が資金を借りる プレミアムを払いオプションを購入 証拠金を差し入れて契約
資本効率 2倍・3倍型なら購入代金に対し日次2倍・3倍 Reg Tでは一般的な株式等の新規買いは原則50%初期証拠金=通常約2倍まで 高いが損益は非線形 高い
投資家の借入れ なし あり 買い手はなし 借入れではないが証拠金が必要
追証 現金購入なら通常なし あり得る 買い手は通常なし あり得る
損失上限 原則購入代金 元本を超える可能性 買い手はプレミアムまで 当初証拠金を超える可能性
満期・ロール 投資家にはなし なし 満期・権利行使価格あり 満期・ロールあり
レバレッジ管理 ファンドが日次調整 投資家が借入比率を管理 デルタ等が変化 投資家が契約数・証拠金を管理
下落方向への取引 インバースETFを「買う」 空売りには借株等が必要 プット購入など 売建て可能
主なコスト 運用経費、内部の資金調達・取引コスト 信用金利、売買コスト プレミアム、時間価値等 売買コスト、ロール・ベーシス等

この比較から分かるのは、LETFがレバレッジのコストやリスクをなくしているわけではなく、その取得・資金管理・下落方向へのアクセスの方法を変えていることである。どの手段が効率的かは、投資家の規模、取引条件、保有期間によって異なる。

(編集部より)   

あわせて読むと理解が深まる記事

参照記事

2026年9月4日 The Wall Street Journal

“ You’re Not Tough Enough to Earn These Huge Returns”

wsj.com

 

2026年6月28日 The Wall Street Journal

“ The Trillion-Dollar Borrowing Binge Lifting the Stock Market to Risky Heights”

wsj.com

 

2026年8月25日 Bloomberg Matt Levine’s Money Stuff

“ Who Should Control Anthropic? ―LETF arbitrage”

Matt Levine’s Money Stuff: Who Should Control Anthropic?
Matt Levine discusses Anthropic’s governance, leveraged ETF arbitrage, circumstantial insider trading, AI natives, and quirky interests.

※本稿は、米国の金融コラム・業界記事を素材に、背景となる考え方や論点を整理することを目的とした考察です。本文中で紹介している参照記事には、有料媒体のものも含まれています。   本稿は生成AIを活用して下書き・構成整理を行い、筆者が検証・加筆修正の上で公開しています。