―100億ドル企業となったApexとContinuation Fundという選択肢
オルタナティブ資産運用大手のApollo Global Managementが、Apex Service Partnersを保有するContinuation Fundへ20億ドルを投資するとの記事を目にした。
当初、このニュースを読んで興味を持ったのはApexではなく、Continuation Fundの方であった。Continuation Fundは近年急速に拡大しているが、その仕組みや役割は必ずしも広く知られているわけではない。
調べてみると、Apexは2019年にAlpine Investorsが投資を開始し、2023年には34億ドル規模のContinuation Fundへ移されている。さらに、Apexは住宅向けホームサービス企業でありながら、2026年時点で約100億ドルの評価額に達したと記事にある。
PEファンドは一般的に投資先企業を取得し、企業価値を高めた後に売却する投資家として知られている。
それにもかかわらず、なぜAlpine InvestorsはApexを第三者へ売却せず、Continuation Fundという選択肢を選んだのだろうか。
今回はApexの事例を通じて、Continuation Fundという仕組みと、その役割について整理してみたい。
記事の紹介 ―ApolloはApexへ20億ドルを投資し、20%超の持分を取得した
2026年5月のWSJ記事 “Apollo Joins Alpine Investors in Backing Home Services Giant Apex” によれば、Apollo Global ManagementはApex Service Partnersを保有するContinuation Fundへ20億ドルを投資し、20%超の持分を取得した。
この取引におけるApexの評価額は約100億ドルであった。
Apexは住宅向けホームサービス企業であり、2026年時点で46州、150超の拠点、13,000人超の従業員を抱え、年間売上は30億ドルを超えていた。
記事によれば、今回の一部売却により、セカンダリー投資家には投資元本の1.66倍、オリジナル投資家には投資額の23倍に相当するリターンが実現した。
2023年10月のWSJ記事 “Alpine Investors to Extend Hold on Home Services Business With $3.4 Billion Secondary Deal” によれば、Alpine Investorsは2023年にApexを対象とする34億ドル規模のContinuation Fundを組成している。
既存投資家には、「持分を売却して現金化する」または「新たなContinuation Fundへ投資を継続する」という選択肢が与えられた。記事によれば、売却を選んだ投資家は当初コミットメントに対して13.9倍のリターンを受け取った。また、投資家は受け取る予定だった資金の約30%を新たなContinuation Fundへロールオーバーした。
Continuation Fundには、Blackstone Strategic Partners、HarbourVest Partners、Lexington Partners、Pantheon Venturesなどがアンカー投資家として参加している。
2023年の記事では、ApexはAlpineの2019年ビンテージ・ファンドにおける最も成功した投資案件の一つと紹介されている。
Alpine自身も同社の最新フラッグシップ・ファンドから、最大投資案件として4億5,000万ドルをContinuation Fundへ投資していた。
創業者のGraham Weaver氏は、「Continuation Vehicleを守りではなく攻めに使っている」と述べている。同氏はまた、過去に投資していたホームサービス企業Wrench Groupについて、「振り返ると、Wrench Groupは早く売りすぎた」とも語っていた。また、同記事では、新たに調達した資金のうち約3億ドルを潜在的な追加買収に充てる予定であることも紹介されている。
2026年の記事では、Apexが属するホームサービス市場についても紹介されている。
McKinsey & Co.によれば、米国人はホームサービスに年間約7,000億ドルを支出している。また、冷暖房修理や電気工事のような、後回しにしにくい緊急性の高いサービス需要は、景気後退時にも比較的安定しているという。Weaver氏は、フロリダ州Jacksonvilleで気温が95度かつ高湿度のときにエアコンが壊れれば、景気後退かどうかに関係なく修理することになる、と説明していた。
PEファンドにおけるExitを考える ― PEは本当に5年で投資先を売るべきなのか?
A 2023年のAlpineは「売却」と「保有継続」の間で難しい判断を迫られていたように見える
PEファンドは一般に、投資先企業を取得し、企業価値を高めた後に売却することが期待されている。その背景には、ファンド期限やLPへの資金返還、さらには次のファンド募集といった事情が存在する。(知識ボックス①参照)
Apexへの投資が始まったのは2019年である。
2023年時点では投資開始から約4年が経過しており、PE投資として見れば、十分にExitを検討し得る時期であった。また、Alpineは次のフラッグシップ・ファンド募集を進める時期にもあった。
公開情報だけでは当時の意思決定を知ることはできない。
しかし、GPの立場から考えると、次のようなことを考えていた可能性はある。
・既存LPに資金を返還し、実現益を示したい。特に次のフラッグシップ・ファンド募集を進める時期であれば、投資実績を示すことにもつながる。
・Apexは13.9倍のリターンを実現できる案件である一方で、依然として成長余地が大きいように見える。売却にはまだ早いのかもしれない。
・過去のホームサービス投資であるWrench Groupについて、創業者のGraham Weaver氏は「振り返ると、Wrench Groupは早く売りすぎた」と語っている。同じような後悔は避けたいと考えていた可能性もある。
・もし新たなファンドから投資を継続できれば、Apexの成長を引き続き取り込むことができる。
2023年の記事によれば、
・売却を選択した投資家は当初コミットメントに対して13.9倍のリターンを受け取った。
・Continuation Fundが組成され、GPがApexの保有を継続した。
・Alpineも最新フラッグシップ・ファンドから最大投資案件として4億5,000万ドルを出資した。
結果としてAlpineは、LPへの流動性提供とApexの保有継続を両立したように見える。
B Continuation Fundは関係者ごとに異なる課題を解決する
このような状況で利用されたのがContinuation Fundであった。
既存LPの中には利益を実現したい投資家もいる。一方で、引き続き保有を希望する投資家も存在する。またGPにとっても、投資先企業の成長余地を高く評価している場合には、保有継続を望むことがある。
2023年のApex取引では、既存投資家に対して現金化と継続保有の選択肢が与えられた。また、投資家が受け取る予定だった資金の約30%は、新たなContinuation Fundへロールオーバーされている。さらに、Blackstone Strategic Partners、HarbourVest、Lexington、Pantheonなどのセカンダリー投資家が新たな資金を供給した。
Continuation Fundは単なる保有期間延長策ではない。既存LP、GP、新たな投資家の異なる利害を調整しながら、優良案件の保有継続を可能にする仕組みとして機能していたことが分かる。(知識ボックス②参照)
C セカンダリー投資家は価格形成にも関与している
Continuation Fundでは、もう一つ重要な論点がある。それは価格である。
GPが「まだ成長余地がある」と考えていたとしても、その評価額が適切かどうかは別問題である。特にファンド間で資産を移す取引では、利益相反が論点になることも少なくない。そのため、Continuation Fundではセカンダリー投資家が重要な役割を果たしている。
彼らは単なる資金提供者ではない。その価格で投資する意思を示すことで、取引価格の妥当性を検証する役割も担っている。ApexのContinuation Fundには、Blackstone Strategic Partners、HarbourVest、Lexington、Pantheonといった大手セカンダリー投資家が参加していた。
その意味では、Continuation Fundは単なる保有延長策ではなく、第三者資本を利用した価格発見・検証の仕組みとして見ることもできそうである。
日本の若手金融マンへの示唆
今回の記事では、Apexそのものよりも、PE投資におけるExitの選択肢としてContinuation Fundが利用されている点に注目した。
PE投資では、投資先企業の価値向上と売却は一体のものとして語られることが多い。しかし実際には、企業価値の成長とファンドの期限が一致するとは限らない。
Apexの事例では、2019年に投資が行われ、2023年には34億ドル規模のContinuation Fundが組成された。その結果、既存LPには流動性が提供される一方で、Alpineは投資先企業の保有を継続することができた。
興味深いのは、その後もApexが成長を続けた点である。2026年にはApolloが20億ドルを投資し、20%超のLP持分を取得している。もちろんApolloは詳細な投資判断を公開していない。
しかしながら、今回のApolloは、AlpineおよびApex経営陣が引き続き事業を主導する前提で投資しており、Apexの今後に十分な成長余地を見出していたからこそ、20億ドルという巨額資金を投じたと考えるのが自然だろう。
また、今回の一部売却では、オリジナル投資家には23倍に相当するリターンが実現している。もちろん結果論には注意が必要である。しかし少なくとも今回の事例は、「優良案件をいつ売却するべきか」というPE投資の難しい問題に対して、Continuation Fundという新たな選択肢が機能した事例として読むこともできそうである。
PE投資を考える際には、「どの企業を買うのか」だけではなく、「いつ売るのか」、「誰が次の資本を供給するのか」という視点も重要なのかもしれない。
知識ボックス
① PEファンドはなぜ投資先を売却するのか
PEファンドは「企業を買って育てて売る投資家」と説明されることが多い。しかし、実際にはGP(運用会社)が単純に売却を好んでいるわけではない。背景には、PEファンド特有の資金構造がある。
一般的なPEファンドは10年前後の存続期間を持つ。GPは投資家(LP)から資金を集め、その資金を投資先企業へ投下する。そして投資先を売却し、LPへ資金を返還することでファンドを終了する。そのため、ファンド期間が後半に入ると、GPには投資先の売却と資金回収が求められるようになる。
LP側にも理由がある。年金基金や保険会社、大学基金などのLPは、PEファンドへ投資した資金が将来どの程度回収されるかを重視している。特に近年は、Exit市場の停滞によって分配金が減少し、LPの流動性不足(Liquidity Crunch)が大きなテーマとなっている。
またGP側も、次のファンド募集を行うためには、投資実績を示す必要がある。 投資先を売却し、
- どれだけ資金を回収したのか
- どれだけ利益を実現したのか
をLPへ示すことは、新たな資金調達を行う上でも重要となる。
このため、PE業界では「投資後3〜7年程度でExitする」という慣行が形成されてきた。一方で、企業価値の成長がファンド期間と一致するとは限らない。GPから見れば、「まだ成長余地がある」「今売るよりも、もう数年保有した方が価値が高まる可能性がある」と考えるケースも存在する。
Apexの事例も、こうした状況の中で生まれたものとして読むことができる。
② Continuation Fundとは何か
「売却したいLP」と「保有を続けたいGP」の間をつなぐ仕組みとして拡大しているのがContinuation Fundである。従来であれば、GPは投資先を第三者へ売却し、その資金をLPへ分配していた。
しかし近年は、
- 優良案件をもう少し保有したい
- LPには流動性を提供したい
- Exit市場が不透明
といった状況が増えている。
そこで活用されているのが、セカンダリーファンドである。Blackstone Strategic Partners、Lexington Partners、HarbourVest、Pantheonなどのセカンダリーファンドは、こうしたContinuation Fundへの投資を積極的に行っている。
一般的な流れは次のようになる。
① GPが既存ファンドで保有している投資先をContinuation Fundへ移管する
② セカンダリーファンドやその他の機関投資家が新たな資金を出資する
③ 現金化を希望する既存LPは資金を受け取ってExitする
④ 継続保有を希望するLPは、新しいファンドへ持分をロールオーバーする
⑤ GPは引き続き投資先の経営支援を続ける
この仕組みによって、
GPはLPへ流動性を提供できる一方で、自らは優良案件の保有を継続できる。近年のContinuation Fundは急速に拡大しているが、その背景や活用目的は必ずしも画一的ではない。
Exit市場の停滞やファンド満期への対応として利用されるケースもあれば、Apexのように「もっと保有したい優良案件」のために利用されるケースもある。
Apexでは、Alpine Investorsは2023年に34億ドルのContinuation Fundを組成した。その後も保有を継続し、2026年にはApolloが約20億ドルを投資し、企業価値は約100億ドルと評価されている。
もちろん結果論ではある。しかし少なくとも今回の事例は、Continuation Fundが単なる延命措置ではなく、優良案件の保有期間を延長するための手段としても活用されていることを示しているように見える。
(編集部より) あわせて読むと理解が深まる記事
参照記事
2026年5月28日 The Wall Street Journal
“Apollo Joins Alpine Investors in Backing Home Services Giant Apex”
2023年10月25日 The Wall Street Journal
“Alpine Investors to Extend Hold on Home Services Business With $3.4 Billion Secondary Deal”
2026年5月28日 APOLLO Release
“Apollo Joins Alpine Investors in Backing Home Services Giant Apex”
2023年10月25日 Alpine Investors
“Alpine Closes $3.4 Billion Single-Asset Continuation Transaction to Support Apex Growth”

※本稿は、米国の金融コラム・業界記事を素材に、背景となる考え方や論点を整理することを目的とした考察です。本文中で紹介している参照記事には、有料媒体のものも含まれています。 本稿は生成AIを活用して下書き・構成整理を行い、筆者が検証・加筆修正の上で公開しています。
