― private creditを個人投資家に広げた米国のビークル
米国のプライベートクレジットを理解する際に、頻繁に出てくる言葉が BDC(Business Development Company) である。
BDCは1980年に米国議会が導入した制度で、中堅企業などへの投資や融資を行うための上場ビークルである。
名前だけ見ると「企業育成会社」のように聞こえるが、実際には多くの場合、個人投資家を含む資金を中堅企業の融資に振り向ける仕組みとして機能している。
BDCの基本構造
BDCは法律上、**Investment Company Act(1940年投資会社法)**の枠組みの中にある。
特徴は次の3点である。
① 上場できる
BDCは株式市場に上場することができる。そのため、個人投資家でも株式を通じて投資できる。BDCは投資信託のようにNAVで解約する商品ではなく、市場で株式を売却して資金を回収する点に注意。
② 中堅企業への投資
BDCは主に
- 中堅企業への融資
- メザニン投資
- 少数株式投資
などを行う。銀行が貸しにくい企業に対して、銀行と競合・補完する形で資金を供給する役割を担うことが多い。
③ 高配当
BDCは税制上、REITに近い仕組みを持つ。利益の大部分を配当として分配すれば法人税が軽減される。
そのためBDC株は「高配当銘柄」として扱われることが多い。
private creditとの関係
近年、BDCは private credit市場における一つの重要な資金源になっている(特に個人投資家資金のチャネルとして)。
例えば
- Ares Management
- Blue Owl Capital
- Apollo Global Management
などの運用会社は、BDCを通じて個人投資家資金を取り込んでいる。
つまりBDCは
個人投資家
↓
BDC
↓
private credit
↓
企業融資
という資金の流れの一つを形成している。
なぜBDCが重要なのか
銀行規制の強化により貸出構造が変化する中で、private creditがその一部を補完してきたと指摘されることがある。その中でBDCは、個人投資家から資金を集めるチャネルの一つとして機能している。
注意点:流動性のギャップ
ただし、BDCには構造的な問題もある。
多くのBDCが保有する資産は
- 非上場企業への貸付
- 流動性の低いローン
である。
一方、BDCの株式は市場で売買できる。
このため
資産は流動性が低い
↓
株式は流動性が高い
というギャップが存在する。
市場環境が悪化すると、このギャップが価格変動の原因になることがある。資産は非流動、株式は流動という構造が、市場価格と実態の乖離を生み得る。
一方で、この構造は非流動資産に対して市場価格という形で流動性を付与する仕組みでもある。
このブログとの関係
BDCは、private creditの「評価」「流動性」「リテール化」を理解するための前提の一つとなる。
- private creditの評価問題
- Blue Owlの記事
これらの記事を読む際に、
「BDCとは何か」
を理解していると、private credit市場の構造がより見えやすくなる。
特に「評価問題」を扱う記事では、BDCの構造理解が前提になる場面が多い。
